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三浦綾子さんの「氷点」「続・氷点」を再読して感じたこと

最近、以前に読んだ本をまた読み返すことをしています。

これまでは、新しいものばかり求めてきたが、以前に読んだ本の一節がふと思い浮かんだりすると、もう一度読んでみようかなと思ってしまうのです。

そんな中、最近読み終えたのが三浦綾子さんの「氷点

氷点は1964年、昭和39年の12月から約一年間、朝日新聞に連載された小説です。

朝日新聞の懸賞小説に当選したのが、当時は無名だった三浦綾子さんだったのです。

氷点のヒロインは、陽子という明るい名前を持つ少女ですが、彼女の出生にまつわる秘密がこの小説にずうっと流れています。

父親は病院を経営する医師の辻口啓造・母は夏枝。

美人の誉れ高い人です。

そんな夏枝がある日、ふとした気の迷いから別な男性のアプローチを快く思い、許したことから三才になる娘が殺されるという悲劇に見舞われます。

夫の辻口は、その妻のふるまいを許すことができずに、犯人の娘を引き取って妻に育てさせることで、復讐心を満足させようとしたのです。

氷点がテレビドラマになったのは、私が中学か高校か定かではないのですが、そのころでした。

土曜日の午後の放送だったと記憶しています。

氷点のヒロイン・陽子が(内藤洋子さん)の綺麗な哀し気な表情は、いまも覚えています。

父親役は、芦田伸介。

母親役は、新玉三千代さんでした。

父親は渋く、母親は上品で美人で、問題がありようもない家庭なのですが、その辻口家には重大な秘密があったのです。

毎回、ドラマチックな展開があり、陽子に同情しながらも、続きが楽しみでハラハラドキドキしながらみたものです。

ヒロインの内藤洋子さんの綺麗なおでこと、長い髪も素敵でした。

 

小説「氷点」を読んだのは、たぶん成人してからだったと思います。

成人してから私は、市立図書館に通うようになりました。

それまで学校の図書館しかみたことのなかった私は、市立図書館の膨大な蔵書をみて興奮しました。

一週間に一人五冊も、無料で借りることができる。

小説だけにとどまらず、詩の本や、手芸本、絵や健康本等々、全部無料で読める♪

しかも、読みたい本をリスエストすると、希望が叶う場合もあるというではありませんか。

嬉しかったですね~。

図書館通いが楽しくて楽しくてたまりませんでした。

そのときの私は、ただ本が好きというだけで、最近よく「本を読めば漢字を覚える」とか「本を読めば文章力が身につく」など、読書をすることによって何かを得ようと思っていたわけではありませんでした。

いまは、読書週間なども設けられ読書が奨励されていますが、私が子供の頃は、本を読む人は「怠け者」と思われていた時代です。

身体を動かしよく働くことが美徳とされていた時代でしたので、近所の本好きな方が店番しながら本を読んでいると、影で「カラ焼き」(方言で怠け者)と揶揄された、そんな時代もあったんです。

その時代によって変わる価値観。

でも、変わらないものもある。

それは人の思い。

愛する人に愛されたい、裏切られたときの哀しみ。

そのことによって、多くの人が傷つき辛い人生を送ることになる。

人の心というものは、いかに時代が変わろうとおなじなのだと思います。

陽子というヒロインに託した三浦綾子さんの思いが、今回、氷点を再読したことによって少しわかったような気がします。

三浦綾子さん、大好きな作家さんです。

続けて「塩苅峠」を読む予定です。

この作品も、以前読んだことはありましたが、実話をもとにして三浦綾子さんが書き上げた小説で、ここまで献身できる人間がいるのだということに衝撃を受けた作品でした。

年齢を重ねた私が、どんな思いを抱くのか楽しみです。